先日発売された「Pen」2020年6月15日号を購入した。今回購入した理由が、複数ある。6月15日号は、【いまこそ、「ジェンダー」の話をしよう。】というジェンダー特集の回だったからというのと、北欧ノルウェー在住のジャーナリスト、あぶみあさきさんの記事も掲載されているためだ。
日本でも近年、性やジェンダーやセクシュアリティについて語られる機会が増えたように思います。しかし、世界基準でいうなれば、日本はこれらについての知識や理解が遅れているのは明らか。まだまだ、全ての人々が伸び伸びと自分らしく生きられる社会になっていないのが現実であると感じます。
映像作品に関しても同じです。同性同士の恋愛や生き方にフォーカスした映像作品も日本では大衆に受け入れられるようになりましたが、ゲイ×ゲイ、レズビアン×レズビアンといたような組み合わせだけの描写に過ぎないような気がします。しかし、世界で生まれる新作映像作品には、もっと多様的に登場人物たちを描いているのが一般的。十人十色というたとえがあるように、性やジェンダーやセクシュアリティに関してもみんなが異なるのは、当然なのです。男か女かというような二元論でカテゴライズすることは、不可能である。このことは、Netflixをご契約されている方であれば、特に実感していただけると思います。Netflixオリジナル作品には、たくさんの多様なキャラクターが自由に物語をリードしてくれていて、世界の視聴者がどのように性やジェンダーやセクシュアリティについて考えているのかを教えてくれているような気がします。
例えば、私も大好きなNetflixオリジナル作品「ザ・ポリティシャン」も、その一つ。
ジェンダーノンコンフォーミングのキャラクターや、バイセクシュアルなキャラクターなどがメインキャラクターとして登場します。バイセクシュアルなキャラクターに関しては、劇中で、「女性の方が多いけど、男性とも女性ともデートする。」といったような発言も普通にあるし、実際、一つの性に問わられずにパートナー選びをしていることがわかるシーンもある。ただ、彼らの性について特別に言及されることもなく、淡々と物語は進んでいきます。私たちが何も疑問を持たずに呼吸するように、彼らも自由に恋愛をする。世界の国々では、もうここまでのことは当たり前のように、映像作品で描かれていると思うと、私たちも、もっと性やジェンダーやセクシュアリティについて正しい理解をしていくべきじゃないのかなと思いました。
とはいえ、これらの理解を深めるといってもその方法がなかなか分かりにくいのも事実。なんだか難しいそうなものに思えて、その一歩が踏み出せない人も多いのではないでしょうか。そういう人に、是非おすすめしたいのが、「Pen」2020年6月15日号です。雑誌1冊分で組まれている【いまこそ、「ジェンダー」の話をしよう。】という特集内では、性についての用語、男女格差の実態、同性婚の現状などの基礎知識から、ジェンダー平等社会の実現が進む北欧社会について、AI、ファッション、芸術におけるジェンダー論まで、さまざまな角度から性やジェンダーやセクシュアリティを考えることが出来る良書です。
ジェンダーというテーマは、現代社会を生きる上では欠かすことのできない必須事項です。見ないふりしてやり過ごせる時代は、もう終わりましたよ。いまこそ、みんなでジェンダーの話をするべきときではないでしょうか。
【目次】
雑誌「Pen」とは?
男性向けカルチャー・ライフスタイル雑誌。毎月1日、15日に発売されている。デザイン、アート、ファッション、食など、毎号取り扱うテーマは多岐にわたる。
今回購入するまで、「Pen」という雑誌について全く存じ上げなかったのですが、非常に面白い特集を組まれていて、もっと早くに知りたかったなと思いました…。男性向けの雑誌ということですが、特集によっては、女性も購入したくなるものが多いですね。今後も要チェックだ!
「Pen」2020年6月15日号でのおすすめポイント
全ページおすすめなのですが、今回は特に印象に残った記事をご紹介します。
基本知識についてわかりやすく解説されている!
「そもそもジェンダーとは、性とはなんだろう。」、「なぜ日本は男女格差(ジェンダーギャップ)で、世界121位なのか?」、「これだけ押さえておきたい、重要トピック」という記事では、性やジェンダーに関わる基本知識や情報について、詳しくそしてわかりやすく解説されているため、まずはここを読んでほしい。とくに「そもそもジェンダーとは、性とはなんだろう。」という特集では、イラストやカラーでわかりやすく性に関する用語を解説してくれているため、非常に勉強になった。個人的に思っていたのは、性についての用語がありすぎて、近年複雑化していることだ。性が多様であるからこそ、それにまつわる単語がたくさん存在するのは、当たり前であるが、それが逆に理解のハードルを上げてしまっているような気がしていた。特に、英語から日本語に訳されたカタカナ英語用語は、余計理解が難しくしていると思う…。なので、一度自分の理解を整理するためにも、「そもそもジェンダーとは、性とはなんだろう。」を読んでみると、非常に学びが多い。知っていると思っていたけど、知らなかった概念や用語もたくさんあるなと改めて実感した特集でした。
著名人からのインタビューが必見!
タレント・ミュージシャンとして人気のりゅうちぇるさん、オネエタレントとして一世を風靡し、性別適合手術を成功させたダンサーのKABAちゃんさん、同性のパートナーがいることを2018年に公表した日本文学研究者のロバート・キャンベルさんのインタビューも掲載されている。3人とも異なる立場からインタビューに答えているのだけれど、既存の価値観にとらわれることなく、自分らしく生きてきた3人だからこそ話すことができる強いメッセージが、印象的でした。特に、性別適合手術を受け女性に戸籍変更したKABAちゃんさんのインタビューは、印象に残っています。KABAちゃんさんが放つ言葉もそうだけど、インタビュー写真からも彼女の生き方を感じることが出来ました。というのも、本当にKABAちゃんさんが美しくって、びっくりしたんです。インタビュー中にも自身の性に対するさまざまな苦悩が語られていますが、それらの葛藤を乗り越えて、自分らしく生きることを選択してきたKABAちゃんさんだからこそ表現することができる笑顔や内なる美しさがインタビュー写真からバンバン伝わってきました。本当に必見です!
女性の活躍が国を豊かにするという考えが当たり前に浸透している北欧社会
北欧社会というと男女平等社会で、世界幸福度ランキングでも常にトップ常連国というイメージ。実際、北欧の多くの国では、女性の首相が国を牽引しており、ジェンダーギャップ指数のランキングでも常に上位国となる。この男女平等が当たり前に実践されている北欧社会におけるジェンダー観を8つのトピックで紹介しているのが、興味深かった。
意外だったのが、北欧の中でもジェンダーギャップ指数ランキングで後れをとっていると言われているのが、デンマーク。(後れをとっているといえども世界14位…。)そのデンマークにおける課題や展望についても語られているのも、非常に参考になることばかりであったと感じる。
北欧に関する記事を書かれたのは、私が日ごろから尊敬しているノルウェー在住のジャーナリスト、あぶみあさきさんです。あぶみあさきさんの著書では、北欧社会における政治と民主主義についてわかりやすく解説されていますので、こちらも是非ご覧ください!
ドラァグクイーンの真なる美しさ
アフリカ大陸やアマゾンの少数民族や先住民族を撮影して名を轟かせた写真家のヨシダナギさんが次の被写体に選んだのは、ドラァグクイーン。ドラァグクイーンとは、派手な衣装や化粧を身にまとった男性が女性性を表現するパフォーマンスの一種。近年は、Netflixオリジナル作品「ル・ポールのドラァグレース」などでもその存在が取り上げられ、現代の新しい多様性のアイコンにもなりつつあると感じます。ヨシダナギさんが撮影するドラァグクイーンは、力強くもあり、繊細な美しさも秘めている。色とりどりの美しい世界に魅了されること間違いなし。
実は、私の親友のアメリカ人でドラァグクイーンをやっている人がいます。友人を訪ね、アメリカに行ったとき、友人のショーを見に行ったことがあります。人生初のドラァグクイーンショーでした。友人は、生まれつきの体格も良いし、日ごろからよく鍛えているため、筋肉モリモリでアスリート体型。どちらかといえば、(一般的な価値観で判断するなら)いかにも男性的な外見。日ごろの振る舞いや見た目からは、いわゆる女性らしさみたいなものは感じない人なのですが、ドラァグクイーンのショーが始まった瞬間、スイッチが入ったのがわかりました。友人が表現する世界では、力強い美しさがしなやかさと共に表現されていたのです。友人だからこそ表現できる美しさだったと思います。化粧も身のこなしも完璧でした。とにかく、本当に美しかったんです。その晩感じた衝撃は、一生忘れることができません。ヨシダナギさんの作品からも、私が初めて体験したドラァグクイーンショーの夜に感じた衝撃を感じました。
ドラァグクイーンを撮影したヨシダナギさんの作品も先日発売されたばかりです!こちらも要チェックですね!
まとめ
もちろん、私も完璧な人間ではないから、知識や理解が完璧ではないかもしれないし、時には誰かを傷つけてしまうかもしれない。でも、それが知識不足から発生するものであるとするなら、私はこれからも勉強し、知識や価値観をアップデートし続けたい。誰かを尊重するということは、自分を尊重するということにも繋がると思う。誰もが生きやすい社会を実現するなんて、きれいごとに聞こえるかもしれないし、1人じゃ難しいことにも聞こえるかもしれないが、一つ一つコマを進める必要があると感じる。そのためには、やっぱり一人一人の力が大切だと思います。だから、いまこそ、「ジェンダー」の話をしよう、私はそう思う。
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