2011年7月22日。北欧のノルウェーで連続テロが発生しました。このテロ事件では、多くの尊い命が失われ、今もなお、ノルウェーに大きな傷を残す痛ましい出来事となりました。
事件では、首都オスロにある政府庁舎が爆撃された後、ウトヤ島で銃乱射事件が発生。当時、ウトヤ島では、ノルウェーの政党(労働党)の青年部のサマーキャンプが行われていたため、多くの未来ある子供たちが犠牲となりました。
「ウトヤ島、7月22日」は、そんなノルウェーのウトヤ島で起こった銃乱射事件を当時ウトヤ島のサマーキャンプに参加していた少女目線で描いた作品です。
パニック映画に近い構成で物語が進行します。事件自体が、非常に残忍のため、鑑賞するのもツライ気持ちでしたが、現代ノルウェーを知る上では、避けては通れない作品であったため、鑑賞しました。
【目次】
作品紹介
「ウトヤ島、7月22日」(原題:Utøya 22. juli)
制作:2018年
時間:97分
音声:ノルウェー語
字幕:日本語
あらすじ
2011年7月22日。ウトヤ島で、労働党の青年部サマーキャンプに参加していた若者たちは、オスロで爆破事件があったことを知る。不安に感じるものの、オスロから距離のあるウトヤ島は安心だと感じる若者たちの前に響き渡る銃声…。実際にノルウェーで発生した事件を基に制作された作品。
感想
何が起こっているか分からない演出がリアルすぎて、ツライ
10年前にノルウェーで実際に起こった事件を基に制作された映画ですが、内容が内容なだけに、見るのにも非常に勇気と気力が必要とされる作品でした。
実際の事件中、犯人はウトヤ島で72分間乱射し続けていたのですが、本作も、事件の72分間を被害者目線で、ワンカットで再現しています。主人公目線のワンカット撮影のため、犯人の姿は、ほとんど映ることがなく、ただひたすら、銃声と悲鳴が聞こえて、少女たちが逃げ惑うという構成です。
そのため、何が起こっているか観客も終始全く分からないという状況が生まれてしまいますが、事件当時の状況がリアルすぎるほど再現されているようで、本当に胸が苦しくなりました。映画で描かれた恐怖や混乱が、実際に起こってしまっただなんて、信じたくないけど、事実なのか…と思うと、本当につらくて仕方ない。
凶悪な事件を映画化するということの重み
非常にリアルな描写で、ウトヤ島での事件を被害者目線で描きだす本作ですが、事件当時について詳しくない私たちのような外国人が観ると、事件の全体性が分かりにくくなっているようにも感じます。犯人の姿もほとんど映りませんし、犯人の動機なども、本作では一切明らかになっていないからです。本当に何も知らずに映画を観てしまうと、ただのパニック映画というぐらいの印象にしか残らないかもしれません。
「ウトヤ島、7月22日」で描かれている残虐さ・苦しみ・悲しみを、私たちのような立場から、本当に理解しようと思うなら、ノルウェーの事件について、ある一程度の情報を頭にいれておかなれば、少し難しいかもしれないなと感じました。
一方で、「ウトヤ島、7月22日」以外でも、7月22日の悲劇を描いた作品があります。
Netflixオリジナル作品「7月22日」では、ウトヤ島での事件の前後についての詳細も犯人を中心に描かれていて、「ウトヤ島、7月22日」とは、対照的な物語進行となります。事件の全容にスポットライトが当たっているため、事件についてあまり知らない人が観ても、事件全体について理解しやすい構成になっています。
ただ、事件について知っている人なら分かるかと思いますが、ここまで詳細に事件や犯人について映像化することは、事件を風化させず、映画から事件を学ぶことができる反面、犯人の思想を世界中に広める可能性もあり、それこそ、犯人の思うつぼなのかもしれない…と複雑な気分になってしまいます。
プロダクトとして形に残すことで、後世に歴史的な事柄を風化させずに引き継ぐことができるため、映像化や小説化などは、決して悪いことではないと考えていました。しかし、被害遺族や生存者の心の傷がまだ完全に癒えたと言えない段階で、ここまで残忍な事件を、どこまで映像化していいものか…その重みを考えざるを得ませんでした。
まとめ
ノルウェーで実際に起こった事件を描いた「ウトヤ島、7月22日」。犠牲になった子供たちのことを考えると胸が張り裂けそうな気分になりますが、今、私たちに出来ることは、事件やその事実から目を背けないことなのかもしれません。
「ウトヤ島、7月22日」は、2021年8月現在、Amazonプライムビデオで見放題作品です!
\Amazonプライムビデオ公式は、こちら/